ドレンテ州最古の街 Coevorden:用水路の向こうはお隣の国ドイツ


一泊で少し遠くのDrentheドレンテ州最古の街、Coevordenコーフォーデンに遊びに行った。 

「遠い」とは言っても、国土全体で九州程度の大きさでしかないオランダ、どんな端まで行こうとその気になれば全て日帰りできるのだが、この日の午前中にやっておかなくてはならない所要を済ませてからの遅い出発であったのと、翌日に長めのハイキングをしたかったため、夜はホテル泊としたのだ。

ドレンテ州はオランダの東北部に位置し、すでに故人である義父の出身州でもある。コーフォーデンの中心街から東に直線距離で1.5kmも行けば、もうドイツとの国境だ。

ちなみにドレンテ州の隣は最北の州・フローニンゲンである。

日本全国のYoutube視聴者達(別名「おれたち茶畜」)がその存在を発見してから、あっというまにLiveストリームで一日中アザラシの幼子を愛でる「茶道部」が結成され、ほんの数日で1000万円超えの募金が集まりオランダの全国ニュースにまでなった、「アザラシ幼稚園」で一躍日本人内知名度が上がったあのフローニンゲンだ。

一時の異様な狂乱は少し落ち着いたものの、ワッデン海岸で保護されたアザラシの赤ちゃんたちは今もなお地球の反対側の心疲れた人々をかわいく癒やし続けている。

コーフォーデンは歴史上古い時代からずっと獲ったり獲られたりしていた要塞都市。街はかつては俯瞰して見ると完璧な星型をしていたが、平和な今は3分の1が欠けたいびつな星型をしているらしい。

旧市街地中心の広場にガチョウの噴水があるのは、かつて定期的にガチョウ市が開かれ多くの人が集まりにぎわっていた歴史を物語っている。

中心広場の脇には広い無料駐車場と観光案内所がある。観光客用の連結カートが周遊しているようなので、きっと歴史ガイドツアーなどにも参加できるのだろう。

広場の周辺に沿って並ぶカフェやレストランのうち手近な一つを選び、まずは一息ついてお茶することにした。
ほとんどの場合に私が頼むのはコーヒーだが、午後遅い時間などノンカフェイン系の気分の時のオランダ・カフェ定番は、フレッシュ・ミントティーだ。カップの中にミントの束が茎ごとそのまま大胆に頭から突っ込まれていて、そこにお湯が注がれているだけだ。はちみつの入ったスティックが付いてくるので、それを入れてスプーンでかきまわし、ミントの束が入ったままのカップから飲む。少し小腹が空いていたが、サンドイッチやポテトフライなどだと絶対にドンッと大量に出てくる、メニューの中で一番量があっさりしてそうなスナック(揚げ物)の盛り合わせを頼んだ。

広場のすぐ裏手には、お城というにはやや小ぶりの、それでもどっしりと守りの硬そうな重厚な姿の古い要塞が建っている。内部は今はレストランになっているらしい。要塞都市の名残で街にはかつての弾薬庫や軍施設の建物も点在する。これらも同様に内装だけリノベし、その用途は変わったものの外観は往時の姿のまま保存されている。

旧市街地の広場周辺だけを軽く一回り散策した後、車に乗り込み、東へ行ってみた。5分もかからずGoogleMapでドイツとの国境上に見つけた「Schiefer Turm – Grenzerlebnisstation」なる場所へ到着した。

きれいな池の公園の駐車場から、運河沿いに少し歩いて橋を渡った。橋の向こうの水中に唐突に立っている馬蹄形の標識かモニュメントは国境がここだと示しているらしい。

ただ、国境はそこからこちらの運河の方に伸びているのではなく、そのまま道を突っ切り、横の大きな農地の脇にあるただの用水路上に伸びているのだった。
オランダの農業地帯ならどこにでもある、むしろ狭めで大人なら軽く一飛びで越えられる程度の用水路。

ああ、「国境」があまりにも軽い。

住宅地からすぐ近くの公園と遊歩道内なので、地元の人達が自転車や散歩の途中といった体で当たり前のように軽々とオランダとドイツを行き交う。

ちょっと犬の散歩にドイツ行ってくるわ、とか、牛乳ないからちょっとひとっ走りドイツの店行って買ってきて、とかもう当たり前なのだろう。そもそもドイツの方が買い物は安いので、国境沿いの人たちは普通に買い物はドイツ側の店に行くらしい。

全周を大きな海にガッチリと守られた島国の私達日本人にとっては、国境とは時間も労力もお金もかけて遥々海を越えなければ越えられないものだ。「他国」とは自分たちの国とは全く違う場所であり存在なのだという感覚をみな持っていると思う。
一方、欧州の人たちにとっては、国の面積もそもそも日本の県や地方程度しかない国も多く、しかも全て同じ大地の上の地続きだ。彼等にとって「国境」とは日本で県境を越える程度の感覚かもしれない。いや、もしかしたら隣の市町村程度という可能性すらある。ここでは用水路だったが、長い国境線の別の場所は街の商店街の店と店の間を走っている場所もあれば、巨神兵曰く「個人宅の敷地内を国境が突っ切っている場所もある」というのだから。

そうなると言語はどうするのだろうと思うが、「国境沿いの人たちは大抵どっちの言葉も話せる」らしい。そもそもオランダ語とドイツ語は元の元までたどれば一つの根っこから枝分かれした言語だ。オランダ人はドイツ語を聞けばだいたいはわかるらしい。(ただし逆にドイツ人がオランダ語を聞いた場合の理解度は著しく落ちるそうだ)

8月半ばを過ぎただけだと言うのにもう朝夕は少し肌寒くなってきたオランダ。小中高校はもう始まっているようで、バケーションシーズンのたけなわは終わりに近づきつつある。それでもまだまだ日は長く、日の入りは夜20:30頃だから午後からどこかに出かけても、戸外で行動できる時間はそれなりに確保できるのはありがたい。

お目当ての「Schiefer Turm – Grenzerlebnisstation」は英語では「Leaning Tower – border experience station」となる。実物は木製の見晴台で長い階段で斜めに登っていく造りだ。登り口はドイツ側なのだが、登っていく途中でオランダになるので、国境が体感できる見晴台!らしい。もちろん子供向けだ。

夜はコーフォーデンから車で北東へ20分弱の街 Emmen エメン郊外のホテルに宿泊した。珍しいプライベートサウナ付きの部屋だ。私も巨神兵も日本ではドーミーインの熱々サウナと冷水風呂の大ファンだったので、あの日本式の広くてきれいでテレビまであるサウナが恋しくてたまらない。

このホテルの部屋内のサウナは予想以上に広く、温度もなかなかの速さで高温になった。日本国内はもちろん国外でもいくつかプライベート・サウナを試してきたが、ここは驚くことに私達の歴代ナンバーワンだろう。
惜しむらくは、なぜかベットの真横にサウナがあり、浴槽付きシャワールームは部屋の真反対にある。汗を気持ちよくしっかりかけたのは良いが、それを流すのに部屋をぐるりと回ってシャワーに行かなくてはならないという、まったく意味不明の動線なのだ。
ああ、やはり日本の熱々サウナを出たらすぐに冷水浴があって、休憩椅子(しかも屋外で気持ち良い風)もある、いたれりつくせりサウナに代わるものはどこにもない。

ホテル内レストランでのディナーは勧められるまま「選べるコース」にした。コースなのでてっきり一皿の盛りは単品より少なめのはず…と思いきや、一つ一つが単品並みに大きい。ぬかった。

しかも、どのメニューを頼もうとも基本的にイモはもれなく付いてくる。お漬物か白ご飯のごとく当たり前のように付いてくる。こちらでの主食なのだから当然か。

このレストランではまるで韓国焼肉屋で自動的に出てくる各種キムチ盛り合わせのように、3種違った器で出てきた。ただ、揚げようと焼こうと芋は芋。一般的なオランダ人はこれだけの量を本当にみな残さず消費できるのだろうか?ちなみに身長のせいで大食といつも誤解されるが実は胃は小さい巨神兵は、できない。

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