KrabiクラビのAo-Nang Beachアオナン・ビーチ滞在の最終日、とても人気の場所らしいRailay Beachライレイ・ビーチに行った。
ライレイ・ビーチもアオナンの一部なのだが、ライレイ岬の背後には高く険しい鍾乳石の岩壁が囲い込むようにそびえ立ち、地上からの行き来を阻害している。隔絶されたライレイ・ビーチへ行くには海からのルートしか無く、クラビまたはアオナンのビーチからロングテールボートやスピードボートの乗り合いタクシーに乗るのが一般的だ。
アオナン発のボートは、ライレイ岬の西側のビーチに着く。一方、ライレイよりも東に位置するクラビからのボートは東側ビーチに着くという塩梅だ。エンジン付きのボートなので海面を飛ぶように進み、アオナンからだと15分もあれば到着してしまう。往復料金は1人200バーツ(約¥920)だった。
ホテルの朝食ビッフェを早めに食べてすぐに出発し、アオナンの目抜き通りがビーチに突き当たる角にあるボートチケットの売り場へ向かう。普通のホテル滞在客ならこれからようやく朝食に向かおうか、あるいはまだまだ寝ているかという時間なので、混雑を避ける事ができるはずだ。
予想通りチケット売り場はガラガラで、売り子のお姉さんは「ライレイ、2人」と聞いただけで手慣れた仕草で素早くチケットと現金払いのお釣りをポンッとカウンターに出してくれた。どこのどの船だとも言われていない。わからないままとにかく砂浜の方へ下りると、タイ人のお兄さんが素早く近寄ってきて「ライレイね」と言いながら行きのチケットを受け取り、水際に浮かんでいるロングテールボートの列をさっと眺めたかと思うと「あれね」と私達に指し示した。そのボートに向かう私達の背後からそのスタッフのお兄さんはタイ語で何事かボート上の別のお兄さんに大声で言っている。おそらく「この2人も追加」的なことを伝えていたのだろう。ボート上のお兄さんはわかったと言う感じで手を上げていた。
ボート内にはもう既に何人か客が座っている。私達が最後に乗り込んだところで、お兄さんはエンジン音を一際大きく響かせながらボートを出した。滑り込みセーフで待ち時間なしで船に乗れてラッキーだったのだ。これを逃していたら、次のボートを出すためにまとまった数の客が集まるまで待つ羽目になっていたかもしれない。
10時前にライレイビーチに到着。ビーチは予想通り人気もまばらだった。静かなのは良いが、少し早すぎたのかもしれない。ビーチから伸びる目抜き通りにずらりと立ち並ぶ店やカフェはまだ開店準備中だったり、遅くから開くのかまったく明かりも人の気配のない店もある。
実は現地で買えば良いかとアオナンからは水も飲み物も何も持ってきていなかった。気楽にぶらつく程度の予定とは言え、これから向かう目的地の周辺で水が入手できるのか、どれだけ気温が上がるのかもわからない。当然周りはきれいな海なので「水」自体はどこにでもあるのだが、その水は飲用にも負傷時の対応にも使えないのが皮肉だ。
その後、反対側の東ビーチの小さな店でペットボトルの水を購入できたが、なかなかの観光地値段だった。しかも、結局歩き回っている最中にこの水を飲みも使いもしなかった。それでも「買わなくても良かった」は何事も起こらなかったから言える言葉であって、ともかく水を一切持たずに行動するのはハイカーとしては不用心過ぎるので、必要な保険料だったと思おう。
ライレイビーチの海はとても波が穏やかで、ターコイズグリーンの水は底の砂地が見える程透き通っている。訪れる観光客のほとんどはこの海で泳いだりシュノーケルしながらパウダーのようにさらさらの砂のビーチでのんびり時間を過ごしているようだ。他にも、これだけの立派な岩壁に囲まれた場所なのでロッククライミングも人気のアクティビティらしく、目抜き通りに何件もクライミングショップがあった。実際私達もあちらこちらの岩に取り付いているグループを見かけたが、服装や登り方からして上級者だけでなくほぼ初心者っぽい人たちも多い。自分のギア無しでもふらっと来て軽くクライミングできるシステムが整っているのだろう。もちろん登っている人の傍らにははガイドらしき人がザイルを保持し、逐一手ほどきをしてくれている。
見ているだけなら面白そうだが、私達はクライミングにはとんと興味はない。そもそも巨神兵を支えられる人がいるとも思えない。目的地は他にあるので、先を急いだ。
Bat Cave — コウモリ洞窟と呼ばれる洞窟は、私達のロングテールボートが到着した西側ビーチの端に一際高くそびえる岩山の内部にあるという。ただ、西ライレイビーチ側からだと、きちんとクライミングの技術と装備を持っていない一般人でもアクセスできる道は無いようなので、ぐるりと岩山の反対側のPhra Nang Beachプラナン・ビーチからアプローチする必要があるらしい。
プラナン・ビーチはライレイ・エリアでは一番人気の場所だ。西ライレイビーチと違ってビーチ全体が海水浴専用なので、モーターボートなどは入ってこれずとても静かだからだろう。西ライレイビーチは長いビーチの目抜き通りに近い一角はボートの発着区画なので、その横にある海水浴区画でもひっきりなしに行き来するボートのモーター騒音が響いてくるのは避けられない。
営業開始前の静かな目抜き通りを通り抜けると、すぐに細いライレイ岬の反対側、東ビーチに辿り着く。
こちら側にはクラビからの中型ボートも到着するので、海岸線から少し離れた深い場所まで細長い船着き場が伸びている。この船着き場は海底から建てているのではなく、浮かんでいるだけだが、しっかり造ってあるので船から荷物を持って降りてきた人でも何の支障もなく歩いていた。東側にはリゾートホテルが立ち並び、水際には防波林なのかマングローブの木が生い茂っているので、砂浜のビーチは少し離れた場所にある。
プラナン・ビーチがどこにあるか知らなくても、今荷物を持って船を降りてきた人たち以外のリゾート姿の人達はほぼ同じ方向に向かって行くので、私達もその流れについて行った。
ホテルの敷地と波打ち際の間の細いコンクリの通路は満潮時ではギリギリまで水が来ていて、少しでも波が荒ければ水がかかってしまいそうだ。到着したボートから降りたばかりでお目当てのホテルを探してキョロキョロしている人たちを上手く避けながら、ライレイ岬の突端の方角へ進んだ。
岬の突端も巨大な岩盤がそそり立つ屏風のような山で、その麓の部分をぐるりと巻くようにプラナンビーチへの遊歩道ができている。かつては洞窟の中だったのだろうか、通路の壁や頭上からは様々な鍾乳石が垂れ下がっている。細い通路の片側は板のフェンスで遮られているが、この向こうはリゾートホテルの敷地内だからだ。
遊歩道の途中、鍾乳石に覆われておらず急な山肌が露出している所で上から下りてくる人たちを見かけた。下から見上げてもなかなかの急角度なので、これを下りてくるのはけっこう怖いはずだ。まして彼等の服装も足元も普通のリゾート仕様である。
どうやらこの上にはライレイビーチを見晴らせる場所があり、岩山の中心部には美しい青いラグーンがあるらしい。なかなかそそられる響きだが、問題は水があるかどうかだ。青く美しいのは水がある時だけで、3月終わりの今はタイでは乾季。事前に最近ラグーンに向かった人たちの口コミなどを検索すると、どうやら今は干上がってしまっているようだったので、私達は今回の行程にはラグーン探検はそもそも入れていなかった。
プラナン・ビーチ
噂通り、プラナンビーチは人気の場所らしく、砂浜に到着すると目の前には予想以上に多くの人がいた。もしかしたら昨夜からライレイに泊まっている人たちなのかもしれない。遊歩道出口のすぐ横の岩壁は特に人気のクライミング・スポットなのか大勢の人たちが周囲を取り囲んで今まさにアタックしている数名を眺めていた。水着の人たちは泳いだり波打ち際で水遊びをしており、その他にも服を来たままの人たちは楽しそうに写真撮影にいそしんでいる。水はどこまでもきれいなターコイズ色で、静かな海面の向こうの沖合には巨大な岩の島がポコポコと水面から突き出している。タイのリゾートのイメージそのままの美しい景色だった。
ビーチの端、クライミングの岩壁の向こうに小さな浅い洞穴が2つある。ほんの5m向こうの喧騒と比べると不思議なほどにその穴の周囲は静かだった。
理由は至極明らかで、穴の中には大小さまざまなカラフルな木の棒が乱雑に積まれて、中心にはタイのあちらこちらで見かける花を飾った小さな祭壇が立っていた。取り巻く観光客は意味深なクスクス笑いで、興味津々にその場所を見つめている。無理もない、積み上がった棒はいずれも男性器の形をしているのだ。色褪せほとんどただの棒にしか見えないものも多いが、中には飛び抜けて巨大で色鮮やかなものや、よりリアルな形状のものもある。少し距離を取って取り巻く観光客の間には、誰が勇気ある一番手になるか気配を探り合っているような妙な緊張感が漂う。
一方、こちとら日本人である。その手の祭りや神社や資料館の類ごときでいちいち動揺していては、日本人はやっていられない。見慣れているとまでは言わないが、「ああ、たぶん子宝祈願的な神聖な場所なのだな」とすぐに予想がつく。その証拠に、タイ人らしきカップルが何組か真剣な面持ちで静かにお祈りしており、後でググったところやはり推測通りの場所でビーチの名前もこのプラナン洞窟から来ていた。
コウモリ洞窟
コウモリ洞窟はビーチの反対側の端にあるはずなので、人混みから遠ざかる方向に波打ち際沿いに歩き始めた。少し行くと潮が満ちているため海面の水位があがり、砂浜がすっかり水に沈んでいた。この辺りで水に沈まない場所はすべてリゾートホテルの敷地で、宿泊客専用のビーチチェアやベッドが並んでいるため、私達は立ち入りできない。水没していると言っても深くはなく、せいぜい私の膝下程度のようなので他の一般観光客にならって私達も水の中をじゃぶじゃぶと進んでいった。
干潮の時は水から出ている広い砂浜を行けるのだろうが、今は短パンまでは濡らさないように最も浅い部分を横切っていくルートで進む。足元は砂浜だけでなくごろごろとした石が転がっている部分も多く裸足で歩くのは危険と思い、靴を履いたまま水に入っている。
朝にロングテールボートに乗り降りした際はあらかじめわかっていたのでウォーターサンダルを履いていたのだが、目抜き通りを歩いた所でもう大丈夫だろうとハイキング用の『Altra』のトレランシューズに履き替えてしまっていた。プラナンビーチで水没部分が出てきた時点で再びサンダルに履き替えることもできたのだが、また靴と靴下の着脱を繰り返すのがもう面倒くさくなってしまった。普通のハイクの時でも雨の中を歩くのに靴を履き替えたりはしない。私達が愛用している『Altra』のトレランシューズ『Olympus』シリーズは水抜けの良さと乾きの速さが抜群だというのは既に何度も実証済みだ。ずぶ濡れになってもすぐに靴の中から水が押し出され、天気が良ければその後歩いているうちにあっという間に乾いてしまう。今回だってこの後はすぐに快晴・高温・乾季のビーチで直射日光なのだから速攻乾くに違いない。
— 確かに乾くのはすぐに乾いたのだが、一つ誤算があった。ライレイビーチ・エリアの砂浜は、とにかく粉砂糖のように粒子の細かい砂で、水ともに靴の中に入ってきたその砂を完全に落とすのに一苦労だったのだ。後日談になるが、靴の中の砂を流水で洗い落として完全に乾かした後でも、数日間はひっくり返してパンパンとたたくといつまでも靴の中のどこからともなく砂がパラパラと落ちてきて辟易とした。
水没していた砂浜部分を過ぎると、再び広いビーチが現れ、先程までと打って変わって静かで人もまばらだった。
砂浜の端付近まで近づき、もうすぐにそびえ立つ岩山に突き当たるという所で、ビーチの背後を覆っている木の茂みの一角が入口のように小さく開けているのを見つけた。低い木の枝々が作るトンネルを道なりに進むとすぐに山肌にぶつかった。とても急だが手がかりになる岩や木も多く、なにより上の木にくくりつけられたロープをつたって登れるようになっている。
見た目よりは案外あっさりと登り切ると、屏風岩の根本沿いに細い道が岩々の間をぬうようにほぼ平行に伸びており、少し先の岩山の割れ目の様な部分まで続いているようだ。ここの屏風岩では個人でロッククライミングをしている人たちが数組、あちらの岩こちらの割れ目の中と思い思いにクライミングに挑んおり、それを通り過ぎながら私達はしごく簡単に洞窟の入口へと到達できた。
洞窟内部の手前の方は、壁があちこち崩れているので日の光がふんだんに差し込んで明るい。そんな環境なので内壁を飾る大小さまざまな鍾乳石も風化が進んで色褪せ、大雑把な形になっている。足元も風や雨天時に流れ込む水に磨かれ、そして間違いなく多くの人が歩き回ってきたはずなので、大部分がスムーズな歩きやすい状態になっていた。
それでも、中を歩き回るのは面白く、来た甲斐は十分にあった。少し奥まった光もあまり届かない場所にポツンと小さな穴があり、その向こうは漆黒の闇だった。穴の手前がやや滑りやすそうな傾斜になっているが、穴から横の壁伝いに結び目付きのロープが設置されているのでこの中に進めるということに違いない。
まずは穴の中にスマホのライトを差し入れ、動物か何かが潜んでいないことを確認する。入った途端に深い割れ目などに落ち込んでしまうのも恐ろしい。さし当たって危険はなさそうなので、穴の中に滑り込んだ。
中は小さな部屋になっていて、意外と天井は高く巨神兵が余裕で背筋を伸ばして動き回ることができた。周囲をスマホのライトで照らして様子を見ていると、暗闇の中の壁にコウモリの群れが逆さに張り付いていた。突然人間が入ってきても、明かりを照らされても逃げないのはよほど眠り込んでいるのかそれともここに人間が行き来するのに慣れているのだろうか。じっとしてくれているおかげでスマホで露出時間を長くしてそこそこ良い写真が撮ることができた。
コウモリ洞窟の存在を知って事前にここを通った人のハイキングログがネット上にないか調べたところ、少ないながらもGPXファイルが存在した。彼等のルートログを見ると、コウモリ洞窟を通り抜けて岩山の西ライレイビーチ側の壁に出ることができるようだった。コウモリの部屋の隅々にライトを照らして調べてみると、一角に手作りの竹のハシゴがより小さく暗い穴に向かって立てかけられていた。
その時、思いがけず私達が最初に入ってきた背後の穴から西洋人の若い男性がするりと入ってきた。ぎょっとしたのは、彼が上半身裸で下半身も競泳用の男性水着一枚、素足にアウトドアサンダルという軽装を極めた出で立ちだったからだ。さすがに頭にはヘッドライトを付けていたが風化しているとは鍾乳洞は鍾乳洞、万一こけたり落ちたりしたら素肌に守るもの無しというのはとても恐ろしくてできない。今の今まで水の中で泳いでいましたという姿にも関わらず青年は迷うことなく竹のハシゴに向かいあっという間に暗い穴の中に消えていった。そして私達がコウモリの写真を撮っている間に穴から再び出てきてさっさと洞窟入口の方への戻っていった。一連の流れがあっという間のことで、まるで「毎日やってる習慣ですが、なにか?」とでも言うようなよどみなさだったので、こちらの情報処理がとても追いつかない。
青年は行ったと思ったらすぐに帰ってきたので、もしかしたらこの穴のすぐ向こうがもう反対側の壁だったりするのだろうか?私達は息を詰め、穴の方に耳を傾けて何か聞こえないか探ってみた。どこからか複数の人の声がとぎれとぎれに聞こえた。ただ、それが本当にこの穴の向こうからなのか、コウモリ洞窟にどこか他に私達がまだ発見できていない穴などがありそこからなのかはわからなかった。
当初の計画ではコウモリ洞窟を抜けて、西ビーチ側の壁の穴から可能であればそのまま西ビーチへと下りて行き、西ビーチを端まで歩いて小さな岩山を越えてその向こうのTonsai Beach トンサイ・ビーチへ到達した後、トンサイ・ビーチからは岩壁の麓か中腹にあるようにGPXファイル上は見えるトレイルを辿って東ビーチにあるダイヤモンド洞窟へ行く、という行程だった。
一応ヘッドライトも持参し、GPXファイルもスマホやGPSに入れているのでルートを辿ることはできる。ただし、問題はこのルートが一般人でも普通に辿ることができる難度なのかどうかだ。このログをネット上に提供してくれた人物はもしかしたらちゃんと技術も装備もあるクライマーである可能性は大いにある。いやむしろその確率の方が高いだろう…
ここで引き返そう。
明日の朝にはホテルをチェックアウトしてクラビを離れるので、今夜は五体満足で荷造りをしなくてはならない。「軽く歩ける」以上のことをするような服装や装備でもない。私達はコウモリの部屋を出て、洞窟の入口へと戻っていった。
その後は単純に来た道を引き返し、再びビーチの水没部分を靴のままじゃぶじゃぶと横断した。時間が経過して明らかに水位は前よりも下がり、くるぶし付近程度に浅くなっていた。プラナンビーチと東ビーチを繋ぐ遊歩道の途中では、野生の猿の家族が旅行者のおやつらしいビニール袋に入ったままの食べ物を咥えて山肌を歩いていたり、大喜びでカメラを構える人々のために板のフェンスの上にじっと座っているサービス精神を披露していたりした。
東ビーチに並ぶリゾートホテルのテラスカフェで氷入りの冷たいソーダで暑い中を歩き回っていた体を冷まし、一息ついた後、道の端々に立つ標識に従ってダイヤモンド洞窟に向かった。
ダイヤモンド洞窟 (Phra Nang Nai 洞窟)
自然のままの洞窟であるコウモリ洞窟とは違い、ダイヤモンド洞窟、タイ語ではPhra Nang Nai洞窟は観光用洞窟だ。内部には通路が整備され、きれいな形の鍾乳石には色とりどりのライトアップが施されている。
入口脇の簡素なテーブルでチケット売っているスタッフに、入場料1人200バーツを払って中に入った。
私は観光用洞窟が好きなので、日本でも三大洞窟(秋芳洞・龍河洞・龍泉洞)はもちろんローカルな観光鍾乳洞もけっこう行っている方だと思う。米国在住時にも東部最大のルーレイ洞窟を始め、いくつか美しい洞窟を見た。ここダイヤモンド洞窟は規模から言うと決して大きくはない。一般公開されているルートをぐるっと歩いて回るだけなら10~15分程度で歩ける長さでしかないが、その短い中にぎゅっと見応えが濃厚に凝縮されているので、お金を払う価値は大いにある。時間が許せばぜひぜひ訪れて欲しい。
洞窟の入口からすぐ内側は岩の割れ目を進む狭い通路だが、そこにも既にいくつか美しい鍾乳石の固まりがある。通路の奥にはダイヤモンド洞窟の真骨頂、鍾乳石が壁を一面に埋め尽くした大ホールだ。様々な種類のクラゲの大群が漂っているような、あるいは数え切れないほどの小さく繊細な姿の滝の只中に立っているような、いずれも感動的に細かく芸術的な流水系の鍾乳石がライトアップにキラキラと光っているのだった。
予想を越えたきらびやかさと迫力に圧倒され、私達は大ホール内の通路を何度も回った。ライレイビーチの目抜き通りからも数分で来れる場所にあるので、他にも数組の観光客が見学中で、皆一様に歓声を上げながらあちこちの鍾乳石にカメラを向けていた。
ダイヤモンド洞窟を堪能し尽くし、戻るために西ビーチへの足を向けた。お昼過ぎなので目抜き通りの店はみなオープンしすっかり賑やかだ。人並みに逆行しながら西ビーチに辿り着くと、私達が握るボートのチケットを見てだろう、またもやボートスタッフのお兄さんが素早い足取りで歩み寄ってきた。来た時と同じようにチケットを受け取り、ボートの列を一眺めした後、一艘を指さした。こんな日の高い時間なので他の乗客はほんの2~3名だ。
私達を載せたロングテールボートと西ライレイビーチを出港しぐんぐん速度を上げて行く間にも、アオナンからのボートが次々とお客を乗せてやって来てすれ違っていく。時間はまだ昼の1時ちょっと過ぎ。ライレイビーチが本当に賑わうのはまだまだこれからなのだろう。
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