キューケンホフ公園 Keukenhof:年2ヶ月間だけの「ヨーロッパの庭」

3月も終わりに近づく頃のオランダ、気温は最高でも13℃程度とまだまだ肌寒いので、曇り空や雨降りの日には、外を歩く人たちはまだ普通にダウンジャケットなどを着ている。なのに日中に晴れたりすると、いきなりぐっと暖かくなるのでやっかいだ。

数日前にタイ旅行から戻ってきたが、暑季で連日30℃軽く超えていた毎日から一転この天気なので、気を抜くとすぐに体調を崩してしまいかねない。

そんな中、先日今年の開園シーズンが始まったばかりの『Keukenhofキューケンホフ公園』に行った。

日本のメディアでオランダ観光を特集する時に絶対出てくる写真は、運河沿いに風車の並ぶKinderdijk キンデルダイクか、ここキューケンホフ公園か言うほど「ザ・オランダの観光名所」だ。

真っ平らの大地に広がる色鮮やかなチューリップ畑のストライプの風景、と言えば「ああ」とすぐに想像していただけるだろうか。

キューケンホフは、「ヨーロッパの庭」とも呼ばれる世界最大の花の公園。開園するのは毎年春の花の時期、3月中旬から5月中旬の2ヶ月間のみだ。

私達が訪問したシーズン開始直後の時期では、実は目玉のチューリップの開花にはまだ少し早い。園内の屋外花壇でちょうど満開だったのは、黄水仙とクロッカス、ヒヤシンスという小学校の理科の水栽培実験の代表選手たちだった。

前述した観光写真の定番・広大なチューリップ畑の風景は実は公園の敷地内ではなく、公園の周囲に広がっている一般の花農家さん達の球根収穫用の畑だ。そちらもチューリップの代わりにいずれも水仙の黄色のカーペットだった。

園内の花壇で花の付いていない濃い緑の部分が、まだ開花前のチューリップだった。4月中旬頃にこの緑の部分がびっしりと色とりどりののチューリップで埋まれば、カラフルな花の絨毯が広がり、観光客が押し寄せる。ちなみに2024年の開園シーズン中の140万人もの人が来場した。

黄水仙はオランダではキューケンホフ公園や周辺の花畑でなくても、本当にどこにでも生えている。日本でタンポポやカラスノエンドウがそこらじゅうにわしゃわしゃと生えているとの同じぐらいありきたりに見る花なので、あまりありがたみを感じられないのは申し訳ない。

公園の敷地は、元々お城だったという。東京ドーム8個分もの広さがあるので、適当にざっくり見て回っただけなのに、歩行距離が4kmにもなっていた。

4つあるパビリオン(屋内の花畑やフラワーショー)内では、ありとあらゆる種類のチューリップがすでに花盛りだった他、洋蘭やアイリス、そして菊と紫陽花であふれていた。

紫陽花はオランダの住宅の庭ではもれなく植えてあるのではと思っても間違いでないぐらい、本当に人気の花だ。
ただし、品種はどれも紫陽花の定番のこんもりとした玉型で、色は濃い赤紫や濃い青ぐらいしかない。日本で好まれる淡いピンクやブルー、花の形は星型だったり線香花火だったりとうかわいらしいバラエティーの品種は見かけたことがない。そして紫陽花は次の年もきれいに咲かせたいなら、花が咲いて枯れ始める前に切り取ってしまわないといけないはずなのだが、オランダの庭では枯れ切ってそのままドライフラワーになっても、秋も冬もそのままにしている。

フラワーショーでは大輪の白菊の巨大アレンジメントがいろいろ出ていた。こちらでは菊はただの花の一種でしかないとは重々わかっているが、日本人的感覚からするとどうしてもお葬式か法事のような気分になってしまうのが身に染み付いた文化の違いというやつなのだ。

各種の桜の木もちょうど満開だった。3月末ともなれば、日本では関東から西日本にかけて絶賛花見のシーズンのはずだ。オランダにいる以上、満開の桜並木の風景は日本の友人たちの写真やYoutube動画でしか見られないので、これは私には嬉しかった。

パビリオンの一つは、チューリップと球根の歴史を学べる資料館だった。

このとんでもなく広い園内のきれいな花壇のデザインやテーマは毎年変わるのだという。驚いたのは、その花壇の作成課程を写したビデオで総計約700万個(!)の球根を庭師さん達がなんと「手植え」していたことだ。ー 機械化でないんだ… この年齢になるとその作業を想像するだけで腰が痛くなってくる気さえする。ただただ尊敬だ。

キューケンホフの代名詞である屋外のチューリップ花壇の開花にはまだ早いにも関わらず、そこはさすが世界レベルで有名な観光名所、平日でも観光客でなかなかにぎわっていた。

これでチューリップ最盛期の4月中旬以降だったら、どんな人混みになることやら。140万を2ヶ月で割れば純粋に1日平均2万4千人来場する計算だが、当然大多数は4月中旬以降の1ヶ月間に集中しているのだろう。
その代わり、私達が行った時期には無い、園内の運河の遊覧船や様々なイベントが催されるので、とても楽しいに違いない。

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